「罪の声」などで知られる作家の塩田武士が大泉洋をイメージして主人公を「あてがき」した小説を、大泉の主演で映画化。出版業界を舞台に、廃刊の危機に立たされた雑誌編集長が、裏切りや陰謀が渦巻く中、起死回生のために大胆な奇策に打って出る姿を描く。「紙の月」「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督がメガホンをとり、松岡茉優、佐藤浩市ら実力派キャストが共演する。出版不況の波にもまれる大手出版社「薫風社」では、創業一族の社長が急逝し、次期社長の座をめぐって権力争いが勃発。そんな中、専務の東松が進める大改革によって、売れない雑誌は次々と廃刊のピンチに陥る。カルチャー誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされるが……。
騙し絵の牙評論(20)
音楽も場面に合っている。
大泉洋が、良い意味で大泉洋らしくなかったので、作品の良さが際立っている。
騙し合いと予告で謳ってたけど、一方的に騙してる感じで、実はこうでしたっていう羅列だけのような気がした。
引っかかりや伏線がほとんどないような感じがして、いまいち驚きや上手さ感じ取れなかった
ただ大泉洋のキャラが好きな人は大抵は楽しめると思う。
ガン好きのモデルの行動や雰囲気は興奮したw
現在の出版業界の現実と背景が良く描かれている。色々な物がweb経由で簡単に購入出来る現在とこれからの価値の創出は、まだまだ色々な可能性が見出せるのではと感じた。
大道に争いながら自分の人生を過ごしたいものです。
なのに、見事なまでに原作をバラバラに解体し、映画のために再構築している。
吉田大八監督、お見事の一言。
脚本を読んだときは、度肝を抜かれた。
だが、どんなに解体しようが、原作のエッセンスを殺すことなく、どこまでも「騙し絵の牙」に
なっている。大泉洋と松岡茉優が際立っているのは、もはや当然。池田エライザ、宮沢氷魚、
木村佳乃も抜群に良かったし、國村隼にいたっては爆笑必至である。
私は、大学でメディアの勉強をしている。ありがたいことに、出版の科目を取ったことが奏功した。この物語は、斜陽化する出版社を照らしつつ、生き残りをかけて騙し合いを繰り広げるから面白い。取次と呼ばれる出版独自の販売ルートとその改革、WEB化や発行部数の低下といったトピックスは特に頷ける。実際、私はクルマが好きなので良くクルマ雑誌を漁るが、この数年で休刊・Web化したコンテンツは少なくない。そうした情報の電子化と出版の厳しさをリアルに描いている。それはもしかすると、原作者の塩田武士氏自身が抱いている危機感なのかもしれない。そうした伝統と革新の狭間で奔走する出版社に、引き込まれたことは間違いない。
さらに、この原作は大泉洋を主人公にあてがきしている。くどく大胆に攻める速水は大泉洋そのもの。軽妙なトークと卓越した選球眼がハマり役である。さらにこの原作を、吉田大八はブラッシュアップして脚本に落とし込んでいる。よって、さらにハマった魅力と危うさを速水に感じる。
その他キャストも負けていない。 松岡茉優演じる高野の奔走する様に速水とは違った馬力を感じ、大逆転をしてくれそうな闘志も感じる。その他豪華キャストがどこも適役で、何度呆気に取られただろうか。良い役者が集ったからこそこのハイテンポなゲームを成立させている。
最後に触れたいのは、この読めない展開。出版社の権力争いを軸にしつつ、抱えている現状等を交えた出版ドラマへと変貌していることである。そういう意味では、音楽が上手く扇動していたことも相まって、重奏なドラマが観れたことは間違いない。
まさにサラブレッド。鞭を巧みに使い走り抜けた圧巻のゲームは手に汗を握る。要所を押さえたリアリティと仁義なきバトルに最後まで踊らされた。この映画、めちゃくちゃ面白いです。