「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」などの社会派作品を送り出してきた映画プロデューサーの河村光庸が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務め、第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫った政治ドキュメンタリー。ブラックユーモアを交えながらシニカルな視点で日本政治の現在を捉えた。秋田県のイチゴ農家出身で、上京してダンボール工場で働いたのちに国会議員の秘書となり、横浜市議会議員を経て衆議院議員となった菅氏。世襲議員ではない叩き上げの首相として誕生した菅政権は、携帯料金の値下げ要請など一般受けする政策を行う一方で、学術会議の任命拒否や中小企業改革を断行した。映画では、石破茂氏、江田憲司氏らの政治家や元官僚、ジャーナリストや各界の専門家に話を聞き、菅義偉という人物について、そして菅政権が何を目指し、日本がどこへ向かうのかを語る。さらに菅首相のこれまでの国会答弁を徹底的に検証し、ポーカーフェイスの裏に隠された本心を探る。
パンケーキを毒見する評論(20)
世襲議員ではない首相として誕生し、携帯料金の値下げ要請など行いつつ、学術会議の任命拒否問題を起こした。石破茂、江田憲司、元官僚、ジャーナリストなどから話を聞き、菅義偉という人物、菅政権の目指しているものを探っている。また、菅首相の国会答弁を検証し、裏に隠された本心を探るというドキュメンタリー作品。
現職総理大臣をブラックユーモア含めて取り扱ったところに意義があると思う。面白かった。
うかつにも、パンケーキの事を知らず、政権発足当初、若者はパンケーキで菅総理に親しみを持ってたのだと知った。
アニメ有り、切り絵の動画有り、壺振りの美女有り、ドキュメンタリーなのにパロディを盛り込んで笑わせてくれた。
まだ辞めるって言う前の公開で、よくここまで出来たと感心した。
菅総理が総理大臣をやってるの間に観ておくべき作品だと思う。
マイケル・ムーア監督が当時のブッシュ大統領やトランプ大統領のデタラメぶりに過激なユーモアも交えてぐいぐい切り込むドキュメンタリー諸作に感心し、日本では難しいだろうな…と半ば諦めの境地が長らく続いたが、いやいや捨てたもんじゃないと思わせてくれる。アニメの使い方などは確かに「サウスパーク」の影響も感じさせ、オリジナリティの面では若干物足りないが、人間的魅力が乏しいように思える菅義偉という人物をここまで興味深く映像で伝えてくれた功績は大きい。何よりも“無関心”が民主政治をダメにして、独裁政権を生むのだから。
それから、SNSなどで政治的な発言をいとわない、やはり日本の芸能界では貴重な存在である古舘寛治がナレーターを務めているのも嬉しい。彼に続く人が増えることを心から願う。
菅義偉は寒村の出身で、何の人脈も資金もないまま政治の世界に飛び込み、身一つで成り上がっていった人物とされています(この経歴自体が相当粉飾されていることが、作中でも明らかになるのですが)。政治家としての経歴を積む中で、機を見る感覚を研ぎ澄まし、安倍晋三を支える形で権力闘争を勝ち抜いていきます。だがどうもその権力基盤の源泉には、膨大な官房機密費があったのではないか、と河村監督は示唆しています。そして確固たる派閥の後ろ盾などを持たないために、現在盤石に見える権力基盤は意外に脆いのかも、とも。
国民の支持を失い、さらに自民党内の有力者からも突き放され、ほぼ死に体となった現政権の状況を鑑みると、既に本作が制作されていた時点で、崩壊の萌芽はあったんだなー、と実感しました。他でもない今の鑑賞体験は作中の内容と現在がリンクしている不思議な感覚をもたらすと思います。
またパンフレットは非常に品薄だそう。もし運良く在庫があれば、入手をおすすめします。
ここまで国民のフラストレーションが溜まりまくると、菅総理の実像に迫るドキュメンタリーの効力は薄い気がする。事実の方が一歩先を行っているからだ。でも、所縁の政治家や元官僚やジャーナリストや大学教授が分析する総理と現政権の謎めいた実態は、作品のテーマとして魅力的だ。所々に『サウスパーク』みたいなアニメを挿入したりして、日本映画では珍しいブラックユーモアが作品全体を包み込んでいるのだ。悲しいことに悲劇と喜劇は表裏一体と言うか。
溜まった怒りとフラストレーションは秋の衆院選で晴らすしかない。誰かが言っていた、「みんな生き残って投票所に行こうぜ!」と。そこへの繋ぎとして本作が存在するとしたら、作られた意味は物凄くある。