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ココ・シャネル 時代と闘った女評論(6)
本作は、シャネル自身が作り上げようとした“神話”には目もくれず、かなり冷たく突き放して描いているのが特徴ではないだろうか。
「金イコール自由」という“たたき上げ”の人間らしい貪欲さは強調され、反ユダヤ的な行為などは断罪される。
原題は「ココ・シャネルの幾多の戦争」といった意味だろうが、たしかに、ロマンチックなストーリーなどは排除され、キャリアを勝ち取り、自分だけの利益を守ろうとする野心家の話である。
ところで、シャネルに関する「Wikipedia」の記事はスゴい。
本作のちらし(フライヤー)をみると、ずいぶんと専門家筋の評価が高く、“新事実”もあるように言われているが、帰宅して「Wikipedia」を読むと、ほぼ全部書いてあったし、「Wikipedia」の方がより詳しい。
自分が理解できた範囲では、この映画で語られて「Wikipedia」に書いていないことは、「18歳までオーバジーヌの修道院にいた」というのがシャネルお得意の“神話”だったということだけか。
自分のように、いきなり「Wikipedia」を読んでも、多種多様な登場人物と情報量の多さゆえに、ピンとこない人間には、本作はとても良い「シャネル入門」だと思う。
ただし、ここまで短時間に詰め込まなくても良いのに、と思うほど、“超速”でまくし立てる映画である。
ドキュメンタリーによくある“インタビュー”は少ない。
うかうかしていると、観た内容もただちに忘れてしまうし、何を観たのすら気付かないかもしれない。
テレビの1時間枠を狙って制作されたためかもしれないが、たった「55分」というのは尋常ではない。ものスゴい情報の密度だった。
心配な人は、とりあえずピンとこなくても良いから、事前に「Wikipedia」を読んでおくことをお勧めします。