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ヒトラー 最期の12日間評論(20)
「若くて愚かだった自分に腹が立ちます。恐ろしい怪物の正体に気づけなかったから」と回想録のようにして映画が始まる。1942年、個人秘書の面接でミュンヘン出身とだったいう事が目に留まりトラウドゥル・ユンゲ22歳がヒトラーに採用される。1945年4月20日ヒトラー56歳の誕生日、ベルリンに激しい砲撃。
敗戦ムード濃厚で、焦るヒトラーは部下を罵りどんどんおかしくなっていく。
ユンゲ視線ではなく、ベルリンの地下基地を中心に戦場を描き出した感じの映画。
総統に忠誠を誓っているとはいえ死が迫ってくると側近たちにもそれぞれの人間性を表してくる。
インフラ破壊しろとか言い出すネロ司令の場面もある。
細かいとこは違うものの死に方なども史実に基づいてる。
自殺後はすぐガソリンかけて死体を焼く。晒し者にされないように。ずっと悲惨なシーンしかない。
終戦後、ユンゲは民間で秘書を続けて2002年に死去。
「若かったというのは言い訳にならない目を見開いていれば気づけたのだと」とユンゲ本人のインタビュー映像で映画が終わる。
今までイメージでしかなかった地下壕の様子がきちんとした映像で見れて勉強になる。
ヒトラー、ゲッベルズ、またゲッベルズの奥さんまで似すぎでしょ?!
まだまだ登場人物で誰?って人が多いので今後も何度か見直す予定だが、最後が悲惨すぎて、再び観るのに勇気のいる作品。
ドイツ人の真面目で不器用な、そして民族的自負が生み出してしまった「総統」と「組織」の様に思われる
終末に向かって、内部も混乱し 総統が正気を維持してゆくのが、困難になりつつある様子を克明に描いている
ブルーノ・ガンツも 歴史的大罪を犯しながら、周囲の者とドイツ民衆を魅了してしまった、悪魔的人たらしを 不気味に演じている
名演だろう
ゲッベルス夫人は、美人で 子沢山なことからナチのプロパガンダに利用された(夫はDV)
夫妻はともかく、子供達を毒殺してしまったことは プロパガンダの後始末をあっさり済ませてしまう様で、哀しくもある
(後世に残る 夫のおぞましい犯罪が子供にもたらす影響をも、考えてか… )
エヴァ、ゲッべルス夫人、その他 周囲の女達は正気そうで、彼女等が 男達の暴走を止められなかった時代を感じる
総統への盲目的追従で 自殺する軍人は安直で、ともすれば宗教的ですらある
さもなければ自己中心的、このどちらかであろう
後始末をする者、連合軍との交渉にあたる者が ナチスの中にあっても、指揮系統としては まともであることが判る
現在、罪悪感と企業の思惑が絡み、大量の移民を受け入れたドイツ発の混乱が、またヨーロッパに広がるのを見ると、ユンゲの言う「目を見開いて、見る」ことの難しさを思う
エンドロールに映し出される、各々の人生の行く末も 心に残ったが、やはりヒトラーの残酷さと犬死にしたドイツ兵や一般人、そして大量の収容所の人々の悲惨な人生を想わずに 観ることは出来ない
ユダヤ人にも問題は かなり、ある
が、人々の憎悪と悪魔が結びついた時、とてつもない惨劇が起こることを 思う
そして、被害者であることを 政治利用するのも 新たなリスクであると
涙の出ない感動ってあるんだなぁと想いに耽りながら夜道を歩いたあの頃を思い出した(笑)
ヒトラーの秘書・ユンゲの視点を中心にして「最期の12日間」を淡々と描く作品。
この、「淡々」感が物凄く、映画として最低限の演出は織り込みながら、ウェットなドラマ感を徹底的に排していて素敵。 最低限の演出=自転車(笑)
どんなジャンルでも声高にテーマを押し付けられると萎えるものだと思うが、本作にはそれが無い。それだけに、突きつけられた「もの」を真剣に考えてしまうのだ。
ヒトラーだけでなく、政治、軍事の高官や無名の市民たちの「12日間」も描かれており、良質な群像劇、歴史劇と言って良いと思う。
そういう意味では邦題より原題の方がしっくりくるな。
(「崩壊」「滅亡」という意味らしい。)
とにかく、主演のブルーノ・ガンツを素晴らしい演技を筆頭に、「その時」を再現しようとする丁寧な映画つくりは圧巻の一言。
後からロケ地がロシア(敗残のドイツ兵もロシアのエキストラ!)と聞いて、何とも言えぬ気分にはなったがな(笑) (もちろん、映画の素晴らしさに水を差すものではないですよ)
秘書を雇い入れ指導する姿は、優しく温和な上司といった感じ。
独裁者という言葉は微塵も感じさせず、人間味あふれる男にしか見えません。
しかし、彼の下す命令により数多くの人々が苦しんで来たことは事実。
敗戦が決定的になり、ヒトラーは自殺という選択をしますが、その事でどれだけの人が苦しめられてきたことか…。
幼いヒトラーの子供達までもが服毒自殺させられ、ヒトラーの妻も自殺するという結果は、どうにも遣る瀬無い悲しみで胸が一杯になりました。
降伏か自殺か、残された部下たちの選択が皆違っているところが印象深いです。