「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、繊細なドラマと映像美で国内外から人気を集めるアニメーション作家・新海誠監督が、初めて現代の東京を舞台に描く恋の物語。靴職人を目指す高校生タカオは、雨が降ると学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。そんなある日、タカオは謎めいた年上の女性ユキノと出会い、2人は雨の日だけの逢瀬を重ねて心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノのために、タカオはもっと歩きたくなるような靴を作ろうとするが……。キャラクターデザイン、美術、音楽など、メインスタッフには、これまでの新海作品とは異なる新たな顔ぶれがそろう。短編「だれかのまなざし」が同時上映。
言の葉の庭評論(20)
短いながら絵がすごくキレイで。
音も細かく表現されてて。
本当に、キレイだった。
冒頭「実写か?」と!
自宅では見たことがあったのですが、スクリーンサイズでのあの絵のクオリティに絶句!
新海誠の本気、ここにあり。
後のメガヒット「君の名は。」や「天気の子」より前、この時点で映像美としての到達点があったように思います。
新海監督の趣味が垣間見える場面があります。それは主人公のタカオが、ヒロインのユキノに額付くようにしてその裸足を愛でるシーン。
この映画は、結局コレがやりたかったのではなかったのか!…と(笑)。
あと音楽も趣味全開。歌詞をなぞるようなクライマックスのシーンでした。このシーンも曲ありきですよね~。
クリエイターの創作のヒントって、こういう風なのかな?と。少し頭の中を覗けた気がしました。
タカオくんとユキノちゃんが、お互いに人間としての殻を破り捨てる、あの階段でのクライマックスのシーンは、曲「Rain」とともに心に刺さりました。
ところで新海監督作には、印象的な階段のシーンが多いですよね~。
「君の名は。」ラストでの二人の邂逅。
「天気の子」帆高の非常階段ダッシュ。
古今東西の名作にも、名だたる階段シーンがありますが、それを意識されているのかも知れません。
あと、個人的な話。
新宿御苑での年上女性とのデートだったり、その女性が好きだった曲「Rain」だったりと…
僕の若かりし頃の思い出をトレースしてくれる、特別な作品です。
新宿御苑で雨宿りをする靴職人になりたい少年と職場へ行けない女性の話。
雨が降る東京だの、世界の秘密だの、階段だの、なんだか天気の子みたいだなぁと思いました。
(天気の子は未鑑賞です。)
いや、こういうの本当に好きです。
とても良かった。
これはネタバレ無しで観た方が個人的には面白いと思うので、あまり言いませんが、雨を通しての2人がとても人間的でリアルでした。
青春だからこその悩みだったり、その仕事だからこその苦しみだったり、挫折しながらも立ち向かう様子から、人間の美しさが感じられました。
相変わらず映像や音楽も作品にあっていて、綺麗でした。
時間も45分程度と短めなので気軽に観やすいです。
ただ、ちゃんと歩く練習とか、ビールとチョコしか味がしないとか、パンプスのヒール高とかect、女性を描写するエピソードが少し腑に落ちなかったです。
全体的にいやらしくなくてロマンチックなのがいいです。もっと大人を描いた作品もみてみたいです。いやらしくないやつ。
秒速5センチメートルも三部構成で一時間ちょっとしかなくて映画としてはかなり短い作品でしたが、この「言の葉の庭」はさらに短く、たった46分の作品です。
しかし、たった46分の作品にもかかわらずストーリーは濃密。
天気の子にもあった「美しい雨の描写」がこの作品でも如何なく発揮されていました。冒頭のシーンで新宿御苑の池に落ちる雨が水面に波紋を描くシーンの美しさは本当に素晴らしく、「さすが新海監督」と思わせてくれました。