「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、繊細なドラマと映像美で国内外から人気を集めるアニメーション作家・新海誠監督が、初めて現代の東京を舞台に描く恋の物語。靴職人を目指す高校生タカオは、雨が降ると学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。そんなある日、タカオは謎めいた年上の女性ユキノと出会い、2人は雨の日だけの逢瀬を重ねて心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノのために、タカオはもっと歩きたくなるような靴を作ろうとするが……。キャラクターデザイン、美術、音楽など、メインスタッフには、これまでの新海作品とは異なる新たな顔ぶれがそろう。短編「だれかのまなざし」が同時上映。
言の葉の庭評論(20)
ただ、主人公の気持ちの揺れ方が、どうにも私にとっては落ち着かない。居心地が悪い。いや、高校生の頃なんてみんなこうじゃないか?と言えなくもないが、いや、違うなと少し疑ってしまうのだ。確かにいるかもしれない、っていう程度の中途半端な共感が、ラストの流れで私を見事に置いてけぼりした。
実は学校の古典の先生だったという衝撃(というほどでもない)。15歳と27歳という歳の差はあれど、年上の女性に憧れる気持ちがよく伝わってくる。女子生徒とのいざこざがあり、結局は学校を辞めて実家に帰ることになるのだが、恋は実らずとも未来を予感させる。切なさの点でいえば、『秒速5センチメートル』にはかなわない・・・
映像的にはデジタル処理がなされ、実写ではないかと見間違うほど雨の風景がとても綺麗だ。
雨の滴がキラキラと水面を輝かせる。
傘に当たる雨音が、雨のリズムを軽やかに刻んでくれる。
雨の描写がとても上手い新海監督。
この映画のおかげで、梅雨の憂鬱な気分が楽しいものに変わりました。
明日雨だったら、いつもと変わった景色が見られるかもしれない。
そして、雨の日にしか出会えない特別な出会いが隠れているかもしれない。
歳の差の2人の本音のぶつかり合いが、雨のしぶきと重なって、とても幻想的なラスト。
これからの2人の未来に幸あれと祈りたくなります。
何気ない、景色や季節の変化を描くのとても上手い監督。
言の葉の庭は、秒速5センチメートルに続く大好きな作品の1つです(^^)