22歳でパティスリー世界選手権チャンピオンに輝いた天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝書をもとに映画化し、つらい少年時代を過ごした孤独な青年が極上のスイーツで奇跡を起こす姿を描いたフランス発のヒューマンドラマ。母親に育児放棄され、過酷な環境で暮らす少年ヤジッド。そんな彼にとって唯一の楽しみは、里親の家で団らんしながら食べる手作りスイーツで、いつしか自分も最高のパティシエになることを夢見るように。やがて児童養護施設で暮らし始めたヤジッドは、パリの高級レストランに見習いとして雇ってもらうチャンスを自らつかみ取る。田舎町エペルネから180キロ離れたパリへ通い、時には野宿もしながら必死に学び続けるヤジッド。偉大なパティシエたちに従事し、厳しくも愛のある先輩や心を許せる仲間に囲まれて充実した日々を送るが、嫉妬した同僚の策略によって仕事を失ってしまう。主演はTikTokで6600万人のフォロワーを持つ映像クリエイターのリアド・ベライシュ。本作が長編初監督となるセバスチャン・テュラールがメガホンをとり、劇中に登場する美しく華麗なデザートの数々をヤジッド本人が監修。
パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ評論(3)
学ぶ環境が整っていないところで、才能のある少年が努力を重ね、成功していくお話しです。全体的に言葉は多くない映画ですが、描写から色々と考えさせられます。
そしてスイーツを作っているところの映像は、とても美しく、私も食べたい!と思いました。
成長するにつれ、愛憎の“憎”が高まっていく息子。でも実母にも自暴自棄になってネグレクトに至ってしまう要因はあるにはある。それは移民大国フランスが抱える問題でもあるが、生まれてくる親を選べない子からすればたまったものではない。
観ていて思ったのが、パティシエは芸術家でもあるという事。まるでオブジェのようなスイーツを作ったかと思えば、彫刻家顔負けのような彫刻造詣の技量も求められる。その技量がカギを握るクライマックスで、苦い環境から甘い世界に飛び込んだヤジッドが作ったものは何か。それは是非ともその目で確認してほしい。