「昼顔」のルイス・ブニュエル監督が再びカトリーヌ・ドヌーブを主演に迎え、ベニト=ペレス・ガルドスの小説を映画化。両親を亡くした16歳の美少女トリスターナは老貴族ドン・ロペの養女になる。しかしロペはトリスターナに男女の関係を迫るように。はじめのうちはロペの言いなりになるトリスターナだったが、若い画家オラーシオと恋に落ちたことをきっかけに、ロペへの憎しみを募らせていく。愛を知った少女が冷酷な悪女へ豹変していく姿をドヌーブが怪演。2018年、フランス映画界を代表する名優たちの主演作を集めた「華麗なるフランス映画」(18年2月~、東京・角川シネマ有楽町)でリバイバル上映。
哀しみのトリスターナ評論(1)
「華麗なるフランス映画」という企画上映で(数十年ぶりに)見たが、ブニュエルやアントニオーニをフランス映画というくくりに入れるのは違和感があるな。この映画など全編スペイン語で、舞台もスペインだ。ま、たぶん俳優中心に編んだ企画なんだろうけど。
ブニュエルの即物的で情け容赦ない筆致はここでも徹底している。あと、夢の唐突な闖入も。フェルナンド・レイはブニュエルの作品にたびたび出演しているが、ほぼ同じような役柄で、監督自身を投影しているのかもしれない。
レイ扮する老人が仲間と歓談している横を、トリスターナが松葉杖の音を響かせながら何度も往復するシーンが怖い。