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喜劇 女は男のふるさとヨ評論(1)
主演倍賞美津子は、全国を旅するストリッパー。これぞ『男はつらいよ』の原点。
監督・脚本森崎東。共同脚本山田洋次。
身寄りの無い女達を世話し、ストリッパーとして派遣・斡旋しているのが森繁久彌と中村メイコの夫婦。森繁は今日も昼行灯で、しがない芸能社を実質切り盛りしているのは中村メイコの方。
そこへ倍賞美津子が帰って来る。
帰って来るなり、いきなり大阪のヤクザと一悶着。父親の森繁も半殺しの目に合い、中村メイコがある方法でとんでもない報復をする。
身を隠す為に旅立つ倍賞美津子。するとある時倍賞と知り合ったと言う緑魔子がやって来る。
これぞ完全に寅さんの世界のパターン。
この後はその後の緑魔子の様子と平行し、河原崎長一郎をヒモに従えて、全国を旅する倍賞美津子の様子が描かれて行く。
緑魔子は、登場当初びっくりする位に醜い姿で登場して驚かせる。この仕事よくぞ受けたなあ〜とさえ思う。
一方倍賞は、「その内にポイッと捨ててやるよ〜」と、知り合いのストリッパーに語っていた、河原崎長一郎との関係だったのだが…。
中盤での雨降るキャンピングカーの場面は素晴らしかった。
NHKしか映らない白黒テレビ。ニュースには江田島で元日本兵らしき遺体が発見された…との報道。放送終了を告げる君が代が流れる。
一連の流れのこの場面、当初から脚本には盛り込まれていたのだろうか?だとしても、例えそうで無くて、もうちょっとやそっとでは思い付かないと思う。
思わず震えが来る程の演出力だった。
終盤での中村メイコが森繁久彌に、悲しい女の叫びを言い聞かせる場面も凄かった。とにかく後半での中村メイコの演技は圧巻の極み。特にこの後警察署にて、花沢徳衛と山本隣一の2人の刑事を相手にして言い放つ一言は実に強烈だった。
「ガムを与えると誉められるのに、身体を慰めると罪になるんですか?…随分と詰まんない国になっちゃいましたね〜」
更に畳掛ける「あたしやね、そんな考え方しか出来ない女の子達が不憫でならないんですよ…」
ここで思わず泣いてしまった。
この時に中村メイコをはやし立てる酔っ払い達の生かし方なんか、素晴らしい位に演出が冴えています。
社会の底辺で必死になって生きている人達に対する、その優しい演出の眼差しに感激した。
初めに登場するヤクザや、その後の河原崎長一郎がどうなったのかどうか?等、回収されないままで終わってしまい、単なるプログラムピクチャーの1本との認識しかされていない本作品ですが、これは隠れた名作だと思いますね。
まさか、童貞大学生の役が佐藤蛾次郎だったとは!
(9月3日ラピュタ阿佐ヶ谷)
※日付けは公開年度とは異なる