藤沢桓夫が婦人生活に連載中の原作を、「愛情の決闘」の新人富田義朗が脚色、「純潔革命」の川島雄三が監督した。「嫁の立場」の高村倉太郎、「鞍馬天狗
青面夜叉」の木下忠司がそれぞれ撮影、音楽を担当している。「乙女のめざめ」の三橋達也、「君の名は」の月丘夢路、「きんぴら先生とお嬢さん」の高橋貞二、大坂志郎、「弁天横丁」の水原真知子、「シミ抜き人生」の北原三枝、「若旦那の縁談」の坂本武、「坊っちゃん(1953)」の多々良純、「鞍馬天狗と勝海舟」の丹下キヨ子などの他SKDから映画初出演の芦川いづみが出演している。
東京マダムと大阪夫人評論(1)
東京郊外の社宅に住む、奥様方の生態をコミカルにテンポよく物語る。おしゃべりな女性同士の丁々発止をリズミカルに描き、その中で翻弄される若者たちの恋を、最後には北原三枝演じる重役のお嬢さんがまとめ上げてしまう。
世間知らずの生意気なお嬢さんだったが、恋の相手の本心を知るや、自分の想いを抑えて、好きな相手とライバルの幸せのためにひと働きするのである。この映画を通じて、彼女が最も人間的な成長を見せる。これは、物語の中心にいるはずの奥様方の、見栄、自己顕示欲への批判であり、節操も何もあったものではない女性たちのいさかいに終止符を打つのが、恋の当事者である彼女なのである。
上映中、場内に笑いが絶えない、川島雄三らしい非常に楽しい作品。