「蛇の穴」と同じく、二十世紀フォックスの副社長ダリル・F・ザナックが自ら製作に当たった1950年度作品で、最近相ついで作られた第二次大戦を背景とした戦争映画の1つである。監督は「海の征服者」のヘンリー・キングで、第二次大戦に参加したバーン・レイ・ジュニアと、サイ・バートレット(「アラスカ珍道中」)の2人が自作の小説より脚本を書いたもの。撮影は「狐の王子」のレオン・シャムロイ、音楽は「私も貴方も」のアルフレッド・ニューマンの担当。主演は「仔鹿物語」のグレゴリー・ペックで「パーキントン夫人」のヒュー・マーロウ、この映画でアカデミー助演賞をうけた「西部魂(1941)」のディーン・ジャガー、舞台出身のゲイリー・メリル、「私も貴方も」のミラード・ミッチェル、「ワイオミングの緑草」のロバート・アーサー、その他が共演している。
頭上の敵機評論(6)
戦争ものというより、上司とは、指導者とは、管理職とはどうあるべきかを学べる作品です。
グレゴリーペック演じるサベージ准将が、親友ダベンポート大佐が指揮する部隊を冷静に判断し、親友を解任し、自らが立て直すことになります。
厳しく部下に接する彼のやり方に初めはついて来れない隊員たちに苦悩しながら、徐々に戦果を上げていき、その中で新しいリーダー候補も育っていきます。失敗すれば即、死につながる極限状態で、サベージはとうとう精神をきたしてしまう。初めは親を威を借るダメ指揮官だったゲートリー少佐が編隊長を替わり、見事ミッションを成功させる。
世の上司として、管理職としてこうあるべきという姿を見ることができる作品です。
ヨーロッパでの戦いは米軍兵士にしてみれば助っ人意識、弱い使命感ではミスも多く、死への恐怖は拭えない。そんな折、対空砲火の届く低高度爆撃命令を巡って指揮命令系統は破たんする、命令に反発する温情派の司令官に替わって冷徹な司令官が着任、あえて怒りの対象となることで不安をすり替え、緊張感、結束力を高める。実践指導で編隊飛行の有用性を示すことで自信の回復に繋げる。しかしB-17の根本的な弱点が解消された訳ではなく数を増す敵戦闘機の執拗な攻撃で目前で部下の機を失う衝撃から司令官もストレス障害にみまわれる。初見ではテーマは組織論やコーチングのように思ったが根は深い、運に頼るなと言う割には精神論、兵の能力だけでは爆撃攻撃の弱点は解消しない、論理的な分析、問題解決能力の欠如もしくはそれ以前の無理は承知の確信犯の横行は無くならないということか。
戦闘シーンは軍の記録映画を用いたらしい、シーンは少ないが戦争体験世代には爆弾の嵐などみられたものではないだろう・・。
それが命を賭した現場であれば尚更のこと。
しかしそんな彼の心根を折るほど戦争は悲劇。