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不思議なクミコ評論(1)
栄光の日が来た!
私たちに対して 暴政の
血まみれの旗が上がった
血まみれの旗が上がった
聞こえるか 戦場の
残酷な軍人のうなりが?
彼らは私たちの腕の中まで来て
私たちの息子や妻の 喉を掻き切って殺す!
武器をもて 市民よ
軍隊を組め
向かおう 向かおう!
けがれた血が
私たちの田畑をうるおすまで!
フランス国家「ラ・マルセイエーズ」の歌詞です。
なんかね、もうね。フランスの歴史と来たら、俺の印象は、ほぼ「スプラッター・ホラー」ですから。何か勘違いしてるでしょ、俺。誰か、この馬鹿にお説教して下さい。
映画の冒頭で、江戸末期に日本へ来たと思われる欧州人の日本滞在記の一部が紹介されます。「日本は野蛮」。蒸気機関も鉄砲も無い日本は、未開ではあるし、侍が真剣を振り回す様は野蛮に見えるでしょうが、フランス人には言われたくないよ、ってのはある。
それは置いといて。
東京オリンピックの前後に日本を訪れたマルケルは「岡村クミコ」さんなる、フランス語ペラペラの女性(自称24歳)へのインタビューと、日本の日常風景で映画を作りました。クミコを通じて、日本人の考え方や文化を知ろうとした様にも見えるけど、最後の最後で、クミコ自身への興味だけであったかもしれないセリフで終わります。いずれにしても「サルトル哲学」の世界なんで、理系脳の俺には南海キャンディーズ!
ただ。記録映画としての価値は高いと思う。
この岡村クミコさんですが、1964年時点で24歳と言う事は1940年生まれ。出身は「満州」で「10歳の時に日本へ移り住んだ」との事。いや、それマジですか?30歳くらい、サバ読んでないですか?でも、若い。サバ読んでても、せいぜい30歳くらいにしか見えない。ここが一番の「不思議」。
クミコへのインタビューは多岐に亘りますが、そのクミコの答えが、素晴らしい。哲学そのもの。更に言うと普遍的。1964年当時の世界情勢は、結構荒れてます。マルケルは社会主義国を回ってカメラを回した人であり、「赤」な思想を持っていてもおかしくは無いのですが、そんなプロパガンダ要素はゼロ。小数点10桁までゼロ。
だからとても不思議な映画でした。
だって、画面に流れるのは「高度成長期まっただ中の日本、東京」。そこで語られるのは「時代や旧さを感じさせない哲学の世界」。大学での教材に推奨したくなる、ほぼ50分のタイムリープみたいな作品でした。
マルケルって、面白い。