90年代を代表する映画作家、「恋する惑星」「天使の涙」のウォン・カーウァイが、伝説の剣士たちの青春群像を鮮烈な感覚で綴った一編。中国の人気武侠小説家、金庸の代表作『射[周鳥]英雄傳』(邦訳・徳間書店刊)を基に、原作では老人である主人公らの若き日の姿を描くという設定で、カーウァイが脚本を執筆。アソシエイト・プロデューサーは「ソウル」などの監督でもあるシュウ・ケイ。エグゼクティヴ・プロデューサーはカーウァイの盟友で「チャイニーズ・オデッセイ」などの監督でもあるジェフ・ラウ、撮影のクリストファー・ドイル、美術・編集・衣装のウィリアム・チョン、音楽のフランキー・チャン、ローウェル・A・ガルシアとカーウァイ作品の常連スタッフが集結。他に編集で「風にバラは散った」などの監督でもあるパトリック・タム、カイ・キッウァイ、コン・ジ・ラウ、武術指導に「カンフー・カルト・マスター/魔教教主」のサモ・ハン・キンポーらが参加。出演は「欲望の翼」のレスリー・チャン、マギー・チャン、トニー・レオン、カリーナ・ラウ、ジャッキー・チュンに加え、「恋する惑星」のブリジット・リン、「黒薔薇VS黒薔薇」のレオン・カーフェイ、当時ほとんど演技経験のないまま、降板したジョイ・ウォンに代わって起用された「天使の涙」のチャーリー・ヤンと香港映画界のスターが競演。94年ヴェネチア映画祭金のオゼッラ賞、第14回香港電影金像奨撮影賞・美術賞、第31回台湾金馬賞撮影賞・編集賞受賞。
楽園の瑕評論(1)
何かを忘れようとすればするほど、その記憶は強く心にに残る。
何かを失わなければならないなら、心にしっかりとそれを刻みつけることだ。
女がくれた不思議な酒、魔法の酒でで全て忘れてしまおう。過去の瑕も執着も。
武侠映画がベースとしてあるのだけど、アクションだけではないんだなあ。
ウォン・カーワイが描くとただ、かっこいいだけの闘いの話にはならない。人の感情が絡み合ってものすごくウエットになる。
人が人を思い続けること、
裏を返せば執着。
女たちはみな、恋人や弟や夫などなど相手は違えど誰かを愛するが故に執着している。執着が実ったのはジャッキー・チョン演じる裸足の剣士を追いかけてきた妻だけだ。
鼻歌を歌いながらお粥を食べさせるシーンが微笑ましい。
素直な剣士はとってもいい人だ。
トニー・レオンが演じる盲目の剣士の戦に行く前の卵娘への衝動的なキスとその後の死闘は見所だった。もう一度、桃を見せてあげたかった。
結果的に郷里には桃はなく桃は妻の名前だったのだけど。
愛してるの言葉に憧れても、永遠の愛などなく全ては移ろいゆく。
昔に戻りたいと過去に執着していても、報われずに死んで行った兄嫁のマギー・チャン。赤い服でアップで撮影されたシーンがとても美しい。
何もかも忘れたっていいのかもしれない。桃の花が好きな事以外は。