ジム・ジャームッシュが製作総指揮を務め、ポルトガル第2の都市ポルトを舞台に、異国の地で再会した孤独な男女を描いたラブストーリー。ポルトガル北部に位置する港湾都市ポルト。26歳のジェイクは家族に勘当されたアメリカ人。32歳のマティは恋人ともにこの地へやってきたフランス人留学生。それぞれの事情でこの街にやってきた2人には、かつて束の間の肉体関係を結んだ過去があった。ある日、考古学調査の現場で互いの存在に気づいた2人はカフェで再会し、軽い気持ちで一夜の関係を結ぶ。その一夜が2人の人生を大きく変えていく。ジェイク役に2016年に自動車事故で亡くなったアントン・イェルチン。マティ役に本作が初主演作となるルシー・ルーカス。監督は第70回ベネチア国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞し、本作で長編劇映画デビューを果たしたゲイブ・クリンガー。
ポルト評論(20)
繊細で空虚な哀しい話だな、だからこそ美しい映画だな、という感想を抱きました。
この恋がうまくいかない、すぐ終わるのもそりゃそうだよな、と思います。
マティは教授という社会的にいい感じの相手もいるし、大学や研究など居場所もある。一方、ジェイクは完璧に孤独で何者でもない。我に返ったら、事故物件みたいな男を振って教授を選ぶのも自然の理です。
しかし、そんな合理的な判断などクソくらえ、なんですよね。虚しく、なんの手ごたえもなく生きてきたと思われる2人が、恋をして結ばれて、生きる証のような強烈な実感を得れた。それにこそ至上の価値があるのではないでしょうか。
この映画、燃え上がった一晩以外に、ジェイクとマティが満たされているシーンは皆無だったと思います。ジェイクは言わずもがなですが、将来の描写からもマティもずっと満たされぬままなのでしょう。
そんな空虚な2人だから、刹那の恋に燃えがれたのかもしれないな、そして実はそれが2人…というよりマティにとって変容のチャンスだったのかも、と思いました。
(ジェイクにはマティとの関係しかないので、選択の余地はなかった)
もしかしたら、マティはジェイクとの恋で自分が変わるかもしれない、しかしそれは怖いと無意識的に感じていたのかも。
虚しくてもこのままでいたい、という心の奥底の怯えが優勢になり、教授を選んだ。これまで反復していたパターンを変えるのが怖くて、常識的な選択をした結果、何も変わらなかったのでは、と想像しました。
実際、ジェイクと行って変わるのか、と言われるとわかんないですし、現実的には地獄の展開が待っているかもしれません。しかし、煉獄から新世界へダイブするチャンスをマティは逃したのではないかと思えてならないです。
だからこそ哀しく感じたのかもしれません。
そんな哀しい物語は、どこか儚い雰囲気のあるポルトの夜にぴったり。この街が舞台だからこそ、哀しさがしみったれずに美しい物語に成り得たように感じました。
まぁ、新世界にダイブして成長するような脂ぎった話は、夜空がいつでも最高密度の青色であるきったねえ新宿の夜あたりがふさわしいでしょう。どっちが好きかと問われれば、新宿ですがね。
恋という言葉をレビューで見かけるが、あれは、恋ですらない、と思う。愛でもなければ、恋でもなければ、運命でもない。なんだろう?名前がつけられないなにか。育てていくことは決してできない、きらめきは今にしかない、幸せとはほど遠いのに、自分の意志とは関係なく、いろんな条件が重なって、堕ちてしまう穴のようなもの。そういう、なんのプラスにもならない、なのに惹きつけられてしまうなにかが、人生にはあるときもあるということ、とくに病んでいるときには。その短くとも濃厚な時間を、陳腐でなく描いた良作とおもった。
To Anton
というクレジットが切ない。
オンリーラヴァーズレフトアライブや君が生きた証に出ていたことを知ったけど、全然印象が違った。本作も、彼が生きた証になる作品だ。
2回、2人は出会っている。
教授との結婚式、子ども、バイオリンを弾く娘と突然やって来た夫?元夫?にイラついているマティは未来?
2回の出会いだけれど、朝マティが一人で戻って来たのは?
音楽、空、坂の多い街、カモメの群れ
そういうので楽しめたけれど、肝心のストーリーがわからなかったので、残念です。