さまざまな創作物に影響を与え続けている架空神話「クトゥルー神話」の生みの親として知られるH・P・ラブクラフトが1927年に発表した小説「宇宙の彼方の色」を映画化。クトゥルー神話を愛するベトナム系ドイツ人のフアン・ブ監督が、自身の両親が移民を決意したベトナム戦争下の1975年を舞台に、架空都市アーカム、ベトナム戦争下のアメリカ、第2次世界大戦下のドイツで物語が展開するという独自の解釈を盛り込みながら描いた。1975年のアーカムで父親の失踪を知ったジョナサン・デイビス。彼の父親の足取りは第2次世界大戦中に駐屯していたドイツ、シュバーベン=フランケン地方の森へと向かっていた。父親はかつて、そこにある村で不可思議な現象を目撃していた。そのすべては宇宙の彼方より飛来した隕石から始まっていた。日本語字幕監修を日本のクトゥルー神話研究の第一人者として知られる作家の森瀬繚が担当。
宇宙の彼方より評論(2)
『カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-』と同じ「宇宙の彼方の色」を原作にしつつも、現代版にアレンジした後者とは全く異なるエッセンスが効いており『宇宙の彼方より』がより原作に近い恐怖を描いています。
原作の持つ"得体の知れない、遥か高次元よりの恐怖"が理不尽に降り注ぐおどろおどろしさを感じることの出来る、唯一無二の作品となっていました。
ニコケイ版は、もはや彼の十八番となったイッちゃっている演技が炸裂しており、スリラーとブラックコメディが同居したザッツ・ニコケイムービーになっていたが、本作ではヨーロッパの作品らしく、しっとりジワジワと主人公に謎の「色」が忍び寄ってくる演出が特徴。風や雨、時計や床板の軋みといった自然音や生活音が観る者の不安・不快感をさらに煽る。テレビ版『トワイライト・ゾーン』のテイストを狙った感も。ローバジェットゆえにいろいろな点での地味さ、乏しさは否めないものの、全編モノクロというのが「色」の怖さを高めている。