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007 ゴールデンアイ評論(20)
2020年公開の第25作に向けて観直し007。ダニエル・ボンド最終作のコロナでの延期にショックを受けていたのですが、それならばと開き直って過去のボンドに進んでいこうと決意しました。と言うわけでブロスナン・ボンド編第1回です。
観直して始めて気が付きました。なるほど、007ってアクションコメディだったんですね!思ってたよりコメディ要素が強かった!!そりゃ、ダニエル・グレイクの時にいきなりリアル路線になったらビックリされるわ。登場人物もロシア人でも皆英語喋ってたりしますし、90年代ってまだあまりそういう事気にしない時代だったんだなぁ。
ジュディ・デンチのMは既に本作の時からMだったんですね。ここから観てればスカイ・フォールももっと感動できてたかも?おじいちゃんQの工房が楽しいですね。変な道具を作ってて、とりあえず爆発する物が多いです。後ろでいっぱい失敗してるのが面白い!あの謎の光線が出る腕時計1つ欲しいです。
そして、今では「生きる死亡フラグ」として有名なショーン・ビーンがまだ若い!「死亡フラグ」の称号を得る前ですね。でもこの006、なかなかダメなボスだと思います。自分で動かないと気がすまないボスって、トップとしての自覚に欠けてます。いくら因縁があったとはいえ、わざわざ自分で007を追いかけなくても良いのでは?更にわざわざラダーを下ってトドメ刺しに行こうとするし、返り討ちにあっちゃうし。ああいう時には上から物を落とせばいいんだよ!っと教えてあげたい。
ファムケ・ヤンセンってX-menシリーズのジーンの優等生イメージだったのですが、本作では180度違いますね。エキセントリックなオナトップ役も、とても似合ってました。下手すりゃショーン・ビーンよりインパクトあるかも?太ももで挟んで人を圧死させる技って、夜な夜なレッグマジック(足を開いたり閉じたりする健康器具)で鍛えたのでしょうね。
街中を戦車でカーチェイスするシーンは面白かったです。戦車に追っ掛けられるとか本気で怖いわ。全体を通してやたらと物が爆発してたのが90年代アクションって感じでした。最後のアンテナはどう考えても爆発する要素ないのに、とりあえず爆発させとけみたいな。
それにあの秘密基地、デスクワークしている所の近くに爆発する可燃物大量に置いてちゃダメですよね。あまつさえ液体窒素があるとか職場の安全管理が全くできていません。きっとあの基地はISO認証されなかったに違いない。
これでこそ007
本作は前作消されたライセンスの失敗により、シリーズは6年もの空白を余儀なくされた後、製作陣、配役を一新したリブートです
見事にその反省を生かし正しい方向性でシリーズを再起動させてくれました
ピアース・ブロスナンのボンドは実にボンドらしい
ボンドが言うであろう軽口を期待通り言ってくれ、取るであろう行動をとる
ダルトンとは違う
甘い顔が余裕のある物腰にマッチして上流階級らしさが漂う
そして敵もボンドが相手するに相応しく、彼が防ぐ危機も麻薬戦争のような下世話な話でない
殺し屋もネバーセイネバーアゲインの女殺し屋を彷彿とさせる魅力的なキャラだ
舞台もボンドが現れて欲しい場所ばかり
音楽もガンバレルのところから、現代風に変えて来ており劇伴も一新された
ティナ・ターナーの主題歌も良い
彼女も前作の主題歌のグラダィス・ナイトと同じくソウル界の大物歌手だが時代に合わせた楽曲で歌唱の雰囲気も今風だ
メインタイトルはモーリスビンダーが亡くなった為、替わっているがイメージは踏襲しつつも新しい感覚がある
Mもマネーペニーもボンドガールも刷新され、女性が強く描かれる
時代に合わせた対応でこれで正解
男が女性にうるさくこずかれる現実世界を映画にも投影して、その中でボンドも苦労するがその鼻をあかして見せ、ボンドガールは強くてもやっぱりすぐになびく
そうなるからこそ日常の鬱憤はらしになる訳です
マネーペニーとボンドの関係性は前作では軽視されておかしくなっていたが正しく修正されました
ピアース・ブロスナンのアクションはキレがありスピード感が溢れて現代的です
それでいて旧世代のボンド達のようなユーモアも忘れていません
題名がまた良い
秘密兵器の名前は実は何でもよいのです
ヒッチコックがいうところのマクガフィンなのですから
ゴールドフィンガーとかダイヤモンドは永遠にを思わせる、007らしいネーミングでありさえすればよいのです
それをキチンと分かって付けています
これが前作からの最大の修正点と言えるでしょう
アクションシーンも見飽きたようなシーンは無くし戦車の爆走シーンを目玉に据えています
これは本当に見応えのあるシーンでした
見飽きたようなものでも、照れずにそんなアホな!というぐらいまで徹底的にやるその潔さが胸をスカッとさせてくれます
つまり製作陣が007とは何か
それを、その魅力はどこから生まれて涌き出てくるものなのかを、考え抜いて作ったということなのです
こういう007シリーズをみんな観たかったのです
大ヒットしたのは当然と言えるでしょう
シリーズ17作目。1995年の作品。
6年の休止を経て、スパイ任務再開!
旧製作陣が死去や退陣し、新製作陣による新体制。その他スタッフやキャストも多くが一新。
まさしく、再スタート。
ティモシー・ボンドのような現代的な要素を残しつつ、作風はかつてのショーン・ボンドやロジャー・ボンドのような面白さやゴージャス感を取り戻し、作品は大ヒット。再びドル箱シリーズに。
その要因は多々あるが、最大の功績者は無論、この人。
5代目ボンド、ピアース・ブロスナン登場!
ボンドは世代によって推しがあるが、私にとってミスター・ボンドは、ピアース・ブロスナンである。
劇場で初めて見たシリーズは次作だが、本作もリアルタイム・ボンド。
それに、超ハマり役なんだもの!
ピアース・ボンドは歴代の魅力全て兼ね備えていると言われる。
ショーン・ボンドのようなセクシーさ、ジョージ・ボンドのような哀しみの一面、ロジャー・ボンドのようなユーモアさ、ティモシー・ボンドのようなシリアスさ。そこに、カッコ良さ、スマートさ、ナチュラルさ。
もう、完璧と言っていい。
4代目の時、ティモシー・ダルトンより先に決まりかけていたというのは有名な話。
Q役のデズモンド・リューエンは、「ショーン・コネリー以来最高のボンド」。
トム・クルーズのイーサン・ハントのモデルは、このピアース・ボンド。
ファンだけではなく、業界内にも影響を与え、魅了した。
ピアース・ボンドが一番のお気に入りという人は、思ってる以上に遥かに多いだろう。
さて、ストーリーは…
ソ連崩壊前、ソ連の化学工場で任務に就いていたボンド。任務は達成するも、盟友であった006=アレックが犠牲になってしまう…。
9年後、国際犯罪組織“ヤヌス”を探る任に当たっていたボンド。ヤヌスは最新鋭戦闘ヘリを奪取し、北極圏のロシア宇宙兵器管理基地を襲撃。あらゆる電子機器や防衛システムを無力化させる事が出来るディスク“ゴールデンアイ”を奪い去る。
ボンドは唯一の生存者の女性プログラマー、ナターリアの力を借りてゴールデンアイの行方を追うが、彼の前に現れた黒幕は、衝撃の人物であった…。
落下するヘリにバイクでダイブして乗り込み、間一髪脱出。プレ・シークエンスからいきなり圧巻のアクションを見せ、ボンド復活を謳い上げたと言っていい。
中盤はボンドが街中を戦車で追跡するビックリチェイス。迫力とユーモアのアクションの見せ場の一つだが、ボンドさん、目立ち過ぎです…。
アクションもCGも進歩。初登板のマーティン・キャンベル監督がダイナミックに。
クライマックスは敵基地のパラボラアンテナ上で。
攻撃目標を定めた衛星を止めなくてはならない。
迫るカウントダウンもスリリングだが、それ以上に、立ちはだかる思わぬ敵…。
黒幕は、死んだ筈のアレック。
同じ00エージェントなので英国人かと思いきや、そうではなかった。
祖国や両親を裏切り苦しめた英国や世界へ復讐。
友の為に私的な感情で復讐に燃えたボンドが、今度はかつての友と闘わなければならない。
シリーズで初めて00エージェントが敵に。
敵役に定評あるショーン・ビーンがさすがの巧演。
ボンドガールは、イザベラ・スコルプコ。
九死に一生に遭いながらも、ボンドに同行。プログラマーの腕を活かしてボンドをサポート。それに、仄かな色気漂う魅力的な美人さん。
まだホグワーツの森の番人になる前の“ハグリット”や「俺は英雄だ!」のアラン・カミングら周りも個性的。
だけど本作は、時代なのか女性キャラが一際印象に残る。
マネーペニーが3代目なら、Mも3代目。しかも、初の女性M。演じるは、言わずと知れた名女優ジュディ・デンチ。
元々シリーズの大ファンだったそうで、二つ返事で引き受けたとか。その就任もミーハー感じではなく、さすが後のオスカー女優、ディムの称号。歴代で随一と言っていいくらいの存在感。某英国首相のような鉄の女でありながら、ボンドを信頼。尚自分にとって、このお方の数々の名演や役の中でも、やはりM役がお気に入り。
そしてこの『ゴールデンアイ』を語る上で忘れちゃいけないのが、女が上…いえいえ、オナトップ! 殺人に快楽を感じ、SEX中に狂喜しながら相手を絞め殺す!
演じたファムケ・ヤンセンの美貌とセクシーさと役柄のクレイジーさが見事にマッチ。強烈な印象を残した。
イイ女…いや、イカレ女? やはりイイ女…いやいや、やっぱりイカレ女?
劇中でMに皮肉たっぷりに言われたように、女性軽視の太古の恐竜の冷戦時代の遺物。
しかし、新しい時代。
ボンドもたじたじになるようなオナトップ(=女が上)。
SFチックな悪の組織でもなく、冷戦時代も終わり、コンピューター時代。
そんな時の流れでもボンドが尽くすのは、祖国と女王陛下の為、任務の為、そして自分の為。
変わらぬ魅力と全く新しい魅力を重ね合わせて、007の新時代と新しい任務が始まった!
戦車で敵を追いかけるシーンなんて最高
当時は1日16時間平均、休日は3カ月に1日くらいのペースで働いていたので映画どころではなかったのだなぁ。
ブロスナンがボンドだったのは、ジャッキー・チェンの「ザ・フォリナー」で知ったくらいでw
うん、フォリナーのブロスナンと全然違うね。若いね。当たり前だけど。
恒例、高所アクションはダム。懸垂下降するのかな?と思ったらいきなりのバンジー!
いや、シューティングの反動で減速してたからバンジーではないかもだけど。
確かにフリーフォールが1番速いやね、あの壁 降りるのはw
そして、共闘する006。いつも他の00エージェントって殺られちゃって、ボンドが情報を回収ってパターンだったから、ここまで活躍するのは珍しいなぁ、と思っているうちにあえなく退場。(伏線おてんこ盛り)
続いてカーチェイス。ユアアイズオンリーはリアル「カリ城」だったけど、これ「イニシャルD」じゃないかなぁ?いや、穿ちすぎじゃなくマジにパロディで。製作陣、絶対イニD知ってると思う。
いくら名車とはいえ、1965が最終製造のDB5が最新のフェラーリ355に歯が立つワケがないでしょう?
しかし!ダウンヒルならば!
ドラテク次第じゃ充分バトル可能って事ですよね?このコンセプト思いっきりイニD&しげのですよね。(バリ伝でカブでナナハンぶち抜く頃から変わらん)
ボンドにかかると、恐ろしく豪勢なイニDになりましたねw
ゼニアもボンドガールかな?と思ったけど、ブロスナンボンドの趣味ではなかったようですね。ファムケ・ヤンセンは「ネバーセイ・ネバーアゲイン」でNo12を演じたバーバラ・カレラを彷彿とさせるキレっぷりも悪くなかったです。
バイク、飛行機いろいろ、ヘリ、車いろいろ、列車と出てきましたが船は?と思い返してみれば、タイガーヘリ盗まれたのフリゲート艦でしたね。
今回は「乗り物大集合」な作品でしたが、個人的にはサンクトペテルブルクの街中をタンクでモスクヴィッチ(なんて自動車メーカー、知らんかったけど)を追いかけ回すシーンが1番インパクト大でした。巻き込まれて可哀想なペリエのトラックなど、すっかり自由経済化してましたね。
多感な小学生の頃、ロンドンの街中をケーニヒスティーゲルの大隊が行軍する(しかも薔薇の花背負って)少女漫画に大爆笑。その後、同作者の作品で怪盗のフェラーリ捕まえる為にわざわざレオパルド2を持ち出すNATO少佐に初恋w
それを実写で演ってくれるのですから甘酸っぱいノスタルジーに浸った爆笑シーンなのでありました。
T-72かと思ったけど、T-54にゴムスカートやら爆発反応装甲やら付けた撮影用車だったのですね。
列車はロシアのミサイル列車を想定してるんでしょうか?軍用列車はよく知りませんが、列車の食堂車って好きです、狭いけどw
当時、MI5のトップが本当に女性だったというセンセーショナルな報道を受けてMは女性に。こんな事なら初代マネーペニー役のマクスウェルの希望を叶えてあげられたのに、とも思うがブロスナンボンドにはジュディ・デンチで良かったと思う。データ主義、数字主義の上司っていますわーw
今回から本当のMI6てかSIS本部が使われているそうで、へぇ〜×20
歌はティナ・ターナーかぁ!
すでにいい歳では?と計算してみると、この時56歳!
今も頑張っておられるけど、いやはや凄い。
ボンドとナターリアが大滑り台したパラボラアンテナのアレシボ電波望遠鏡。よく撮影許可が降りたなぁw
世界最大の望遠鏡。ヘルクレス座に宇宙人探しのメッセージを送ったり、万が一 小惑星が地球衝突するなんて時もアレシボなら観測可能という、ワクワクする存在だった。(こんなところで滑り台するなんて、うらやま、、、けしからんじゃないかw)
2020年、中国にこれを上回る巨大望遠鏡が完成するのと同時期に崩壊したのは不思議な思いがする。(中国って、国際的な宇宙探査に協力しなさそうで不安だなぁ)
東西冷戦を描いた作品を現代に継続させるのは難しいが、本作は見事にソ連崩壊前と後を繋いだ。
「黄金銃を持つ男」では、空想上の近未来兵器でしかなかった衛星兵器が「ゴールデンアイ」ではすでに旧ソ連軍の遺物となっている事が感慨深い。
興行成績も007シリーズ過去最高。
21世紀への架け橋として、時代に合った作品へのバージョンアップに成功したのである。