「成れの果て」「街の上で」の萩原みのりが主演を務め、2000年に岐阜県富加町で起きた「幽霊団地事件」の実話をモチーフに描いた都市伝説ホラー。とある地方都市にある、かつて心霊現象で話題となった廃団地。死恐怖症を抱える大学生の史織は、同じ大学に通う啓太や真帆と興味本位でその廃団地を訪れる。そこにはなぜか多くの住人たちがおり、史織たちの前で激しいラップ現象や住人の自殺が続発。しかし住人たちは顔色ひとつ変えず、怯える若者たちを仲間にしようと巧みに誘惑してくる。神秘的な体験に魅せられた啓太と真帆は洗脳され、追い詰められた史織は自殺者が運び込まれた建物内へ入り込むが……。共演は「フェイクプラスティックプラネット」の山谷花純、「夏、至るころ」の倉悠貴、「淵に立つ」の筒井真理子。「リトル・サブカル・ウォーズ
ヴィレヴァン!の逆襲」の後藤庸介が監督を務めた。
N号棟評論(3)
いや。本当に監督、この監督からこの作品が‼️です。
怖いんですけど、他にたくさん考えることもあるんです。
これは【史織】が生き抜いていくためのエピソードでもあるし、死の事についても考える深いところもあるのかなと…。
メインの登場人物は萩原みのりさん演じる【史織】所謂どこにでもいそうな女子大学生。
死恐怖症という持病をかかえ、眠りが浅い日々、夜が来るのが怖いのかな…。ハッキリとした性格で、とても強い、本当に強いけど、心の中は繊細にできている。
相変わらず表現力とパワーの凄さに圧巻。
舞台挨拶で見ていた方と同じ方とは到底思えない。
監督も言ってた彼女の顔色は本当にすごかった…
全身を使い、団地の方々に立ち向かう姿は自分をしっかりと守るため、死と向き合うため、これは敢えて、ここに行くことを準備されていたのかなとも感じる。
元カレの啓太は、倉悠貴さん
倉さん、とてもよかったです。
啓太の彼女役の真帆は山谷花純さん
この登場人物、1番普通に近い。
染まっていく姿が自然と、人の弱さの表現が素晴らしかった。
本当に摩訶不思議で、ホラー感ありつつ
実は幽霊より怖いものは人だと実感。
ただ、愛おしい方を亡くしたときにこの団地に住まわれてるように誰かに(何かに)縋りたくなったりされる方もいるんだろうなぁ。
私は無宗教だけど、宗教とかにハマる方はきっとそういうのに近いかと感じた。
あるインタビューで後藤監督は、「ミッドサマー」と黒沢清監督の「CURE」が好きで、オマージュを入れたと明かしている。その並びで言えば、黒沢監督作「回路」に出てきた不意を突かれる投身自殺のシーンは、「ミッドサマー」にも似た描写があるし、この「N号棟」にもやはり出てくる。そんなわけで、黒沢ホラー諸作の影響も認められるが、たとえば集合住宅の各階の通路で住人たちが異常行動を繰り広げるシーンなどは舞台劇風でもあり、演出が単調にならないよう工夫されているとも感じた。
萩原みのりの出演作では、久保田紗友とW主演を務めた2017年の菊地健雄監督作「ハローグッバイ」が大好きで、あれから5年で人間的にも演者としても確実に成長したようだ……などと考えたところで、そういえば昨年公開の「街の上で」でも見ていたっけ、と思い出した。筒井真理子の存在感、穏やかな表情で底知れぬ恐ろしさを醸し出す表現力は相変わらず見事だ。