「Start Line」「珈琲とエンピツ」などのドキュメンタリー映画を手がけてきた、生まれつき耳の聞こえない今村彩子監督が、アスペルガー症候群の友人との関係について考え、カメラをまわしたドキュメンタリー。今村監督の友人まあちゃんは、空気を読みすぎて疲れてしまい、人と器用に付き合うことができないアスペルガー症候群。一方、ろう者の今村監督も、理解があるような顔をしながら内心では悶々としたものを抱えていた。そんな2人の仲が、ふとしたきっかけでギクシャクしたものになってしまう。2人がこれからも友だちでいるためにはどうすればいいか、カメラを回しはじめた今村監督だったが、たどり着いたのは「友達やめた」という結論だった。障害を抱えた2人のやりとりを通しながらも、誰もが経験したことのある人間関係のすれ違いなどを描き、異なるバックグラウンドをもつ人とどのように共存するかという本質的な問題と向き合っていく。
友達やめた。評論(1)
ハンディキャップを持つ者同士が織りなすコミュニケーションの齟齬。しかしその原因はハンディキャップではなく心の問題。
ハンディキャップとは、友達とは、そしてコミュニケーションとは何かを、ひたすら追究してきた監督の真骨頂。
「心から分かり合える友達」とは実在するのか。衝突の連続も、コミュニケーションの一つの在り方なのだ。