スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンが、19世紀末のスウェーデンの大邸宅を舞台に、4人の女性の愛と孤独、生と性を強烈な色彩で描いた人間ドラマ。広々とした屋敷で暮らす上流階級の女性アグネスと召使のアンナ。アグネスの両親は既に他界しており、姉カーリンと妹マリアも結婚して家を出ていた。ある日、病気で死の床にあるアグネスを見舞うため、カーリンとマリアが屋敷にやって来る。「野いちご」のイングリッド・チューリン、「不良少女モニカ」のハリエット・アンデルセン、「仮面
ペルソナ」のリブ・ウルマンが3姉妹役を演じた。第40回アカデミー賞で撮影賞を受賞。日本では1974年に初公開。2018年「ベルイマン生誕100年映画祭」(18年7月~、YEBISU GARDEN CINEMAほか)でリバイバル上映。
叫びとささやき評論(6)
人間を凝視した厳しさで言えば、ベルイマンの演出には揺るぎが無く、フェリーニは表面に出さない。人間の陽性を開放的に捉えるフェリーニに対して、ベルイマンは人間の陰性を深層から捉えようとする。讃歌に酔うか、探求に苦悩するか、映画もこの振幅の広がりを持つまでになったとは素晴らしいことではないか。私的には、「アマルコルド」が分かり易く好きだし、ベルイマン作品では「野いちご」の感動には及ばない。苦しみだけの映画に対する耐性もないし、人生経験と知力も未熟だからだ。
この物語に救いがない訳ではない。子宮癌に苦しむアグネスと彼女を看護する召使アンナとの関係は、実の親子以上の異様さを窺わせるが両者の信頼は厚い。ただ、主人公の三姉妹の家族の絆は蝕まれて、修復の施しようがないところまで行っている。姉妹間の嫉妬からなのか、憎悪と拒絶の関係性に良心の呵責も見えない。孤立した姿は、人間の醜さを露呈する。また彼女らの愛欲も満たされず醜い。唯一血の繋がりを持たないアグネスとアンナの関係も、一方が弱者であると考えると、このベルイマンの女性の業の暴露は恐ろしい。長女カーリン、三女マリアの夫たちも、他人に関与しない無慈悲な男たちである。映画は、各登場人物の顔の表情のアップでほぼ通して、懊悩の感情、其々の孤独、虚無感に包まれた生活空間をイメージ化し、真っ赤なフェイドアウト(溶暗)のカット繋ぎで構成されている。女性の魂の色を象徴化した色彩設計の演出美。その拘りの独善的な作家性が、凄い。音楽の使い方も素晴らしい。近寄りがたいほどの、ある親族の不協和音を映像化した女性暴露映画。
1976年 9月22日 池袋文芸坐
本作は苦手な一本です。血がつながっていても心がつながるとは限らない普遍的な真実や、埋まらない溝、偽りの自分を生きる虚しさ(これはベルイマン作品に共通している)など主題は理解できるし、ものすごい説得力で迫ってくるのですが、生理的に無理でした。
赤がキツいんですよ!
本当に赤、赤、赤…目が痛いです。
これがモノクロ作品であれば、主張が弱まるので評価は下がるかもしれませんが、もっと落ち着いた、静かな説得力を持った作品になったと思います。モノクロだったらプラス1.5点はかたいです。
あと、中盤まで話の展開が冗長なのは本作の欠点かな、と思います。
一応、感想を箇条書きで。
・三姉妹の中でも、長女カーリンの生き方はキツい。彼女はマジで地獄人生ですね。
・イングリット・チューリン好きにとって、カーリンの熟女ヌードはプラスポイントになりそうですが、ぜんぜん魅力なかったです。人間性に魅力がないと、どんな美人でヌードであっても良いとは思えないのだ、と気づきました。
・次女アグネスは孤独な上に早生しますが、豊かな内面を持った、割と幸せな人だったのかも。
・アンナがアグネスを甲斐甲斐しく世話してましたが、喪った子どもへの代償行為だけではなく、アグネスが優しい人だったからかな、と思いました。
・三女マリーアはクソ女ですが、割と良くいるタイプですね。
・カーリンの旦那が絵に描いたようなクズで笑った。
・生理的にダメでしたが、終盤の展開には目が釘付けでした。カーリンとマリーアの関係性の結末は非常に納得できました。お前らならばそりゃそうだ、って感じです。
・アンナがアグネスを抱く時に胸をはだけさせるのは何故?謎です。もしやサービス的なやつでしょうか。
・あの一族は代々あんな感じなんでしょうね。
ストーリー: 55
キャスト: 55
演出: 15
ビジュアル: 40
音楽: 65
孤独感や心のすれ違いなど言いたいことはわかるが、悠長な時間の進み方に退屈してしまう。それに映画を見ただけでは設定がよくわからなくて、映画を見た後で解説を読んでようやく理解した。
ステイホーム週間につき、ウォッチリストを消化中。なので目に付いた作品を鑑賞。
オープニング、セリフが何もないシーンが続く…。
ってここで、あ、無理かも、とは思ったが、頑張って(笑)観てみた。
外観はいまいちわからなかったけど、お屋敷(城?)の中のお高そうな装飾品、贅を尽くした調度品の数々。素晴らしいお召し物。お着替えはもちろん1人ではしない。お風呂は…??
と、まぁ、一般人にはかなり目の保養に。
登場人物は割と少なめ。
アンナ以外にも料理人とか給仕人とかいるのかな?出てこなかった気がするが。
ずっと同じ舞台での演技を観ていたかのよう。出でくる部屋が赤を基調にしていて、どこを切っても似たようなんだもの。
一部日本の映画「お葬式」とちょっと似ていたシーンも。ちょっと。
シーンが変わるたびに聞こえてくるささやき(ヒソヒソ話)がだんだん気味悪さを増していく感じ。
ワイングラスの破片で血だらけとか、意味がわからないシーンもあり。
高尚過ぎて、理解に苦しむことも。
いろんな意味でやっぱり一般人で良かったわ〜