ショーン・コネリーから三代目ロジャー・ムーアにバトン・タッチされて新たに登場したシリーズ八作目。製作はハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ、監督は「007/ダイヤモンドは永遠に」のガイ・ハミルトン、イアン・フレミングの原作をトム・マンキーウィッツが脚本化。撮影はテッド・ムーア、音楽はジョージ・マーティン、主題歌をポール・マッカートニーとリンダ・マッカートニーが作曲し、“ジェームズ・ボンドのテーマ曲”をモンティー・ノーマンが作曲している。編集はバート・ベイツ、レイモンド・ポールトン、ジョン・シャーリーが各々担当。出演はロジャー・ムーア、ヤフェット・コットー、ジェーン・シーモア、クリフトン・ジェームズ、ジュリアス・W・ハリス、ジェフリー・ホールダー、デイヴィッド・ヘディソン、グロリア・ヘンドリー、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、ロイ・スチュアート、B・J・アーノウ、マデリン・スミスなど。
007/死ぬのは奴らだ評論(11)
2020年のボンド25作に向けて見直し007。6代目から遡って行って3代目ロジャー・ムーアのボンドまで来ました。かなり古くなってきた感があります。73年まで戻ってたらそりゃそうか。というわけで3代目1発目の「死ぬのは奴らだ」です。
ロジャー・ムーアが意外にイケメン‼️既にけっこうな年齢に見えるのですが、いい男ですね。凧に乗ってまで葉巻吸っていたのはちょっと笑えました。で、下にはちゃんとスーツを着こんでいるという。流石英国紳士や!そして、腕時計が便利。
悪人は全員黒人という今だったら問題になりそうな作りでビックリでした。この当時だからあり得た作品ですね。で、ボンドを殺す為に連れて行った先がワニ園てwwwしかも因幡の白兎方法であっさり脱出!スゲー、スパイってあんな事もできるんだ。そんな感じで全体的にユルいのですが、昔の映画の自由な発想って逆にスゴいかも⁉️と思ってしまいます。
元ビートルズでこの頃はウイングスのポール・マッカートニーが歌う主題歌は有名ですよね。映画を知らなくてもこの曲は知っている人も多いのではないでしょうか?この頃のポールって「バンド・オン・ザ・ラン」にせよ、途中で思いっきり変調する曲を作るのにハマっていたんでしょうね。
ラスボスの最後は予想外過ぎて思わず声を出して笑ってしまいました。いやー、本当にフリーダム。今の映画に慣れていると奇想天外過ぎるのですが、これも今に至る007の1つの歴史ですよね。
ではどうするのか?の難問への回答が本作であった
そして、それは観ての通り大正解であった
その答えとは
一つ目は時代の変化へ対応
つまり60年代の価値観で作られて来たこのシリーズを如何に70年代の新しい時代に適応させるか
この回答をしなければ時代遅れのシリーズということが決定的になる
逆に言うとその答えを出せれば、シリーズをこれからも長く制作していけるという訳だ
だからポールマッカートニーとウイングスのロックの主題歌にしたのだ
ヒッチコックでいうところのマクガフィンもゴールドでもダイヤモンドでもなく麻薬になる
黒人運動の盛り上がり、黒人音楽の全世界的流行
NYハーレムの黒人スラム化、さらには中南米ことにプエルトリコからの難民がNYに押し寄せていた
そして米国中に麻薬中毒が蔓延していた
実際、当時は低予算でも黒人が詰めかける黒人向けのアクション娯楽映画が大ヒットを連発していたのだ
オカルトの流行もあった
若者向け原作を選定しベースにして、これらのモチーフをかき混ぜてできたのが本作というわけだ
結果として見事に70年代の空気をまとった007の物語が出来たわけだ
コネリーはやはり戻ってこなかった
レーゼンビーを呼び戻す案もあったろうが、彼にはボンドとしての品と落ち着きが無かった
本作から起用されたロジャー・ムーアの方が断然良いのは明らかだ
実際にはムーアはコネリーよりも3歳年上とのことだが、見た目の若さがある
その上ユーモアのセンスというか雰囲気が漂っているのが良い
ボンドガールのジェーン・シーモア、黒人向けアクション娯楽映画の傑作110番交差点で存在感を示したヤフェット・コットーらの脇役陣の配役も素晴らしい
空気感が70年代のそれになった
ペッパー保安官が暗くなりすぎないように見事にバランスを取る役割を果たしておりこれも見事な仕事ぶり
(ピンクレディのペッパー警部は彼から来てるのかも?)
二つ目は偉大なるマンネリの肯定
物語の基本構成は過去の作品でうけたシーンをそのまま再構成して基本骨格はマンネリで良いとしたこと
アクションならその切り口を変えれば良いし
敵の殺し屋も新しいキャラクターを出せば良い
ポイントは観客が期待しているものを必ず出す
しかもその上を行く度肝を抜く強烈さでやれば間違い無しに受ける勝利の方程式を照れずに真面目にやることだ
観客の観たいものを観せる
NYのハーレム、ニューオーリンズのジャズ葬式はそれだ
セスナと自動車の追跡シーン、有名なモーターボートの追跡シーンは観客の想像の上を行く凄さ
ブードー教の生け贄シーンや鮫のジーンはスピルバーグによって後年、魔宮の伝説、ジョーズでそのモチーフをオマージュされているほどだ
お約束のラストシーンもこうなると分かっていても、それが良い!偉大なるマンネリに正攻法で真正面から取り組んでおり、その潔さがまた満足感に繋がっている
正にプロフェッショナルが考え抜いて作り上げた娯楽映画の傑作だ
本作があったから21世紀まで続けていけるコンテンツに本シリーズはなり得たのだ
これがあのトムフォードやアストンマーチンがパートナーシップを組むとは思えないほどのアホ映画。ロジャームーアについて文句はないしジェーンシーモアもとても綺麗だった。もはやこの二人によって評価の星をつけたが、ガイハミルトン率いる演出やストーリーは酷すぎる。
リアリティという点において評価は0点だ。憎くて仕方ない敵を謎の仕掛けで焦らしたりラストシーンの意味不明のDr.カナンガのデスシーン等見ているこっちが恥ずかしい気分になった。
個人的に笑いはボンドが放つ余裕のブリティッシュジョーク以外いらない(サンダーボールの序盤シーン脊椎矯正マシーンに乗る際、バイク乗車の姿勢と似ていたため「キックスターターはどこ?と尋ねる」)アメリカのペッパー保安官(彼の役自体は嫌いじゃない)もストーリー上いらない。
とにかくボンド映画の脱線を決定付けた駄作と言っていいだろう。
ロジャー・ムーアは女たらしのDNAだけを受け継ぎ、コミカルでおっとりとしたボンドが誕生した。
主題歌もさることながら、音楽がビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーチンなので、ポップな軽いタッチになっている。