ハリウッドが初めて真正面から取り組む湾岸戦争を舞台に、“戦場における本当の勇気”とは何かを問うヒューマン・ドラマ。黒澤明監督の「羅生門」を思わせるミステリアスな構成、迫力の戦闘場面、キャスト陣の好演など見どころは多い。監督は南北戦争を描いた「グローリー」(アカデミー3部門受賞)や「レジェンド・オブ・フォール
果てしなき想い」のエドワード・ズウィック。脚本は「陽の当たる教室」のパトリック・シェーン・ダンカン。製作は「ウォーターワールド」のジョン・デイヴィス、「バラ色の選択」のデイヴィッド・T・フレンドリー、「デイライト」のジョゼフ・M・シンガー、エグゼクティヴ・プロデューサーはジョセフ・M・カラチオロとデブラ・マーティン・チェイス。撮影は「デッドマン・ウォーキング」のロジャー・ディーキンス、音楽は「アポロ13」「ブレイブハート」のジェームズ・ホーナー、美術は「ブローン・アウェイ
復讐の序曲」のジョン・グレイスマーク、編集は「グローリー」「レジェンド・オブ・フォール」でもズウィックと組んだスティーヴン・ローゼンブラム。主演は「青いドレスの女」「バーチュオシティ」のデンゼル・ワシントンと、「星に想いを」「フレンチ・キス」などロマンチック・コメディ専門のイメージを覆す、全く新しい役柄に挑んで新境地を開拓したメグ・ライアン。共演は『アクシデント』(V)のルー・ダイアモンド・フィリップス、「エスケープ」のスコット・グレン、「ペイルライダー」のマイケル・モリアーティ、「クロッカーズ」のレジーナ・テイラー、「ジェロニモ」のマット・デイモン、「ビバリーヒルズ・コップ3」のブロンソン・ピンチョット、「最高の恋人」のセス・ギリアム、「ルディ
涙のウイニング・ラン」のショーン・アスティンほか。
戦火の勇気評論(4)
彼の身のこなしはエリート軍役はほんとに見ているだけでカッコイイ
物語の展開も真実がなかなか見えない中で、謎をデンゼルが追求していく展開は引き込まれてしまった
若き日のメグライアンとマッドデイモンのフレッシュさもみどころの一つだった
総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
調査をすると、軍にとって理想的な話が出てくる。だけどさらに調査をすると、証言が微妙に食い違う。それどころか全く逆の証言までもが出てくる。何が真実なのか分らない。だけど誰かが自分のために都合の良い話をしている。なぜ食い違いが出来るのか、誰が本当のことを言っているのか、真実の行方に目が離せない。
黒澤作品の『羅生門』を髣髴とさせる展開で、真実が最後まで藪の中だった『羅生門』はそれだからこそ素晴らしい作品だった。だが今回は『羅生門』と異なり、何が起きているのかを複雑な過程を経て示してくれる。自分のため組織のため都合よく真実を隠蔽して書き換えるのではなく、不都合な真実に重い心を引きずりながらも向き合う。ちょっと綺麗ごとのようにも思えるものの、自らにけじめをつけるためにも勇気をもって立ち向かう姿と、真実が明らかにされ関係者にも知らされることにすっきりする。
マット・デイモンは劇中の戦場では健康そうな兵士だったのに、戦場から帰還した後ですっかり痩せ細って顔色が悪くなって目だけがぎょろっとしていたのに気がつかずにはいられない。これがほんのちょっとしか登場しない端役のための、役作り上の苦悩と薬の影響の跡を表現するために体を作ったのならばたいしたものだ。
気になったので調べてみると、ウイキペディアでは100日間で18キロの減量をして撮影に臨んだと書いてあったので、彼の職業意識の高さが伺える。IMDbによると、そのためにその後二年に渡って体調を崩してしまったそうだが、この努力によってこの作品を観た巨匠コッポラに認められて『レインメーカー』の主役の話が来たらしいので努力が報われた。『必死剣鳥刺し』で主役となり、ぶよぶよのたるんだ普通の中年男の体型で登場して、鍛え上げられた剣の達人役と自宅監禁でやつれた役をそのまま堂々と演じた豊川悦司にも少しは見習って欲しい。
その他、拳闘好きのモンフリーズ軍曹を演じたルー・ダイアモンド・フィリップスは強い印象を残してくれた。主人公のデンゼル・ワシントンはいつもどおりの感じで悪くなかったが、抱えた苦悩がもっと表現されてもいいかと思った。メグ・ライアンは普段の恋愛喜劇から離れてここでは真面目な役どころを無難にこなしていた。