「ワイルドバンチ」や「ゲッタウェイ」「わらの犬」などで知られるアメリカ映画界の巨匠サム・ペキンパーの唯一となる戦争映画。第2次世界大戦下、ソ連軍の猛攻によって絶望的に追い詰められていくドイツ軍歩兵小隊の命運を、戦場のリアリズムを徹底追及して描いた。1943年、ロシア戦線。ソ連軍との戦闘が激化し、撤退を余儀なくされていくドイツ軍の小隊長シュナイター伍長は、勲章を手に入れることしか興味のない無能な指揮官のシュトランスキー大尉を嫌悪していた。2人の関係が険悪になっていくなか、シュトランスキーは勲章を得るため、シュナイターの部隊を策略にかける。日本では1977年に劇場公開。2017年、公開40周年を記念してデジタルリマスター版が公開。
戦争のはらわた評論(20)
社会からの評価よりも仲間や義理を大切にするシュタイナーのような男になりたい。
総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:75点|ビジュアル:80点|音楽:60点 )
自分が軍人としてどんな活躍をするのかは脇に置いて鉄十字章が欲しくてたまらない名誉欲だけの貴族軍人シュトランスキー大尉と、現場で叩き上げのシュタイナー曹長との対立を軸に物語は進む。だが当初はその物語にあまり興味を惹かれなかった。
自分たちの小隊を銃撃して部下を殺したトリービックは殺したのに、それを命じたシュトランスキー大尉は殺さずそれどころか一緒に戦う。最初はこの物語の展開がよくわからなかったので調べてみた。要は臆病で戦場に立とうとしないのに勲章を欲しがるも無理だと悟って安全な場所に転属しようとするシュトランスキー大尉を、無理矢理戦場に引っ張り出してみたら彼は銃の扱い方すら知らなかったという落ちらしい。それならば展開は納得できる。
でもシュトランスキーがシュタイナーを撃っていた可能性もあるし戦場でシュタイナーが先に死ぬ可能性もある。結果的には目論見どうりになったとしても、決断した時点ではどうなるかわからないしあまり賛成が出来ない判断だった。
それよりも戦場の描き方が良かった。小隊の部下がソ連の帽子を被っていたりしてどちらが友軍か分り辛いが、激しい戦いと簡単に死んでいく兵士とその死体などは、ペキンパーらしい迫力と残酷さが出ていた。シュタイナーはそんな戦場でただ黙々と軍人として自分の責務を果たしていく。
映像は実際はT34/85はまだ登場していなかったりF4Uがソ連上空を飛んだりして史実に合わない部分もある。だが大枠では美術・衣装も再現性が良かったし、兵器も本物が使われていて作り物感が少なかった。
印象深いのは、ブラント大佐が敗戦後のドイツを立て直す人材が必要だとキーゼルを逃す場面。負けを確信しながらも未来へ繋ぐ意志が心を打つ。
それにしてもソ連兵は大量に突撃してくるなと思ったが、実際ソ連兵の犠牲者の方が数倍多いようだ。