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幻の城 バイロンとシェリー評論(1)
バイロンとシェリー、英国を代表とするロマン派の詩人の半生を描く本作は、映像そのものが詩・・・。すべてのシーンにおいて、息を呑むほど美しい映像は、それだけで観る者の心の琴線を震わす。深い交友のある2人は、陰と陽、静と動、相対の双子。2人の人生には「死」の影が常に伴う。その「死」は、シェリーの妻メアリーが『フランケンシュタインのクリーチャー』を生み出した時から「実体」となって付きまとうようになったのだ。フランケンシュタインの物語は、今やバイロンやシェリーの詩よりも、世界中に読まれ親しまれている。日本では、クリーチャーの名前がフランケンシュタインだという誤った認識のもと、ドラキュラやミイラ男と共に3大化け物(?)として有名だが、本作に登場するクリーチャーは、メアリーが劇中で言うセリフのように恐ろしさと哀愁を秘めた「美しさ」をたたえ、人々を死に導いていく。メアリーはその幻影に悩み苦しみ、息子を失ったことで夫婦の愛は冷えて行く。夫は妻が幻影を実体化させたことをなじるが、友人であるバイロンは、自分も娘を失ったにもかかわらず、運命を受け入れたように思える。解き放たれた怪物(死)を運ぶ折り紙の小船・・・。死者を乗せ、たゆたう。それは魂の遍歴・・・。「人間は地上にこそ破壊の跡を記すが、その力の及ぶのは岸にとどまる。大河原の上では、破壊はすべてお前の業、人間の破壊力は、その影すらもとどめない。」-ジョージ・バイロン「チャイルド・ハロルドの巡歴」より-