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クヌート評論(2)
都ベルリンの象徴とされたのは、単に Berlin の Ber- の部分とドイツ語の Bar 「熊」が似ていることによる「語呂合わせ」です。もともとが「熊の街」だったわけではありません。でもベルリン映画祭は、金熊賞といいますし、熊のトレードマークのビール会社にみやげ屋にクマのグッズがいっぱいというご当地なんですね。
そんな熊好きな国民性のなかで、ドイツで最も人気のあるスターとなり大旋風を巻き起こしているのが、本作の主人公であるシロクマのクヌート。
クヌートの人気は、もう“大スターの追っかけ”並のノリなんですね。かわいらしいクヌートの様子を伝えるテレビ番組がいくつも放送され、専用のホームページではクヌートの成長ぶりや写真がたくさん公開されています。毎日更新される「クヌートブログ」まであるんですよ。Tシャツやお菓子などのクヌートグッズが販売され、クヌートソングが作られ、地元でのクヌートの熱狂ぶりはすごいもんだそうなのです。
クヌートは2006年12月5日にドイツのベルリン動物園で生まれました。
母グマのトスカが育児放棄したため、飼育係のトーマスさんがクヌートと同時に生まれたもう1頭を母グマから引き離し(もう1頭は生後4日目に死亡)、人工哺育を行ったのです。
画面を見て、かっ可愛い(^^ゞ、可愛すぎるぅ~と叫びたくなるくらい、クヌートは愛嬌がありました。本作では、どういう訳か自然の中で生きていく2組のクマも同時に描かれます。北極で暮らすホッキョクグマの母子と、シベリアの大地で母親を住民に殺されて、路頭に迷うツキノワグマの兄弟たちです。
それらの子供の熊たちと比べても、クヌートは体型がくるくるしていて、愛くるしいのです。そして仕草も、まるで演出されたかのように、人間の期待に応えるかわいさを体現します。
それに、トーマスさんがつきっきりでクヌートをあやすところが感動的でした。昼夜を問わず、自室でクヌートの育児を担当するトーマスさんには、母熊以上の愛情を感じたし、クヌートも愛される喜びを体中で表していたのでした。
ただ本作は「かわいい」ばかりでなく、地球温暖化の被害者の象徴として描こうという狙いがあったようなのですが、動物園で生まれたクヌートでは、全然説得力はありませんでした。ほかの2組の熊たちも、それなりに厳しい自然のなかで生き抜くところを描いてはいますが、だからといって、地球温暖化には繋がっているとはいえませんでした。
やはり『アース』のラストシーンで、シロクマが、氷の溶けた北極海をあてどなく泳いでいる(実はシロクマは、遠距離の泳ぎでも平気なのだが・・・)ショッキングなシーンに比べると、インパクトが足りません。
だから下手なメッセージよりもクヌートとトーマスさんの交情の深さに絞り込んだ方が、もっと感動作に仕上がったと思います。そういう点では、昨年のトーマスさんの死去が写真1枚とテロップでしか描かれなかったことは、大きな不満です。
トーマスさんがいなくなったとき、クヌートにどんな変化が起こったのか、触れて欲しかったです。
トーマスさんがイースター前に5日間の休みを取ったとき、クヌートがトーマスさんを探し、叫び続けたため、予定より早く動物園に戻ってきたそうです。それほどの、『パパッ子』だったクヌートだけに、絶対に何か感じていたはずです。
上映前からトーマスさんが死んでしまうことを知っていたので、クヌートと無心で遊んであげているトーマスさんには、クグッとこみ上げるものを感じましたね。
ところで一部の動物愛護団体が、シロクマの人工哺育は自然の法則に反すると安楽死を主張したことにも触れられています。あんなに可愛いクヌートを安楽死しろと、愛護団体が言うのは信じられませんでした。
構成ではイマイチかもしれませんが、マイミクの皆さんも、小地蔵のように可愛すぎるぅ~とクヌートに入れ込んでみれば、もっと愛嬌のある人に変われると思いますぞぉぉぉ~。
人にしても、動物にしても、死はさけられないけど、命を助けられたクヌートと、亡くなってしまったトーマスさん。
なんか皮肉だなぁ。
対比として流れるヒグマと北極グマの映像を通して、人間のエゴとか、いろんなことを考えさせられるし、この手のドキュメンタリーは、たくさん見てるけど、クヌートを介してることによって、子供も見やすくなってると思う。