25歳の若さで他界した天才ギタリスト、ランディ・ローズの栄光と悲劇を描いたドキュメンタリー。1980年代、端正なルックスと華麗な演奏で多くのファンを魅了したランディ・ローズ。自身のバンドである「クワイエット・ライオット」のプロデビューは日本のみで全米デビューは果たせなかったが、その後「オジー・オズボーン・バンド」のギタリストに抜てきされたことで転機が訪れる。オジーとランディの相反する個性は強烈な化学反応を起こし、ランディは瞬く間にスターの座へと駆け上がった。しかし人気絶頂期の全米ツアー中、突然の悲劇が彼を襲う。「N.W.A & EAZY-E:キングス・オブ・コンプトン」のアンドレ・レリスが監督を務め、貴重なライブ映像や本人の肉声インタビュー、プライベートショットなどを通してその軌跡を振り返る。さらに、オズボーンや同時代に活躍したエディ・バン・ヘイレン、ランディの家族のインタビューも収録。「L.A.ガンズ」のトレイシー・ガンズがナレーションを務める。
ランディ・ローズ評論(2)
内容は、アーカイブと関係者や友人たちの証言をベースに、ランディの生涯をふり返るドキュメンタリーの定石パターン。アーカイブがライブや音声のみで秘蔵的なものは無いので、それを目当てにするファンの人は肩透かしに思うかも。そもそも、膨大なアーカイブを遺す前に亡くなってしまったのでやむを得ない面もあるが。
もっともライブパフォーマンスは、今の目で見ても凄い。彼のテクニックがいまだ称賛されているのも納得。KUWATA BAND在籍時に河内淳一が披露したギターソロも多分彼の模倣なのだろう(違っていたら失礼)。
ミュージシャン、特にロックバンドの軌跡を辿るドキュメンタリーを観ると、つくづくバンド活動って大変だなと思う。実力はあるのにレコード契約が結べずメジャー街道に乗れない葛藤(クワイエット・ライオットが日本でレコードデビューするに至った経緯を元メンバーが喋っているが、なんとも苦笑するしかない)、メンバー間の不和に脱退…ランディもやがて切磋琢磨してきた仲間と別れるわけだが、観ていて思ったのは、彼は伝記映画の題材としても魅力的という事。刺激的なパフォーマンスをする傍ら、クラシックを学んでいたというプライベートも興味深いし、夭折により存在が神格化されているのが大きい。母が経営していた音楽教室で才能を開花させたという点でも、「ミュージシャンは母性によって生まれる」説をまた立証させている。本作に登場する関係者や元メンバーの証言を膨らませたら、1本のドラマとして作劇できそうな気がする。
全身放送禁止のような存在のオジーが、小柄で繊細そうなランディを今でもこよなく愛しているというのも良かった。まさに陰と陽、水と油。人間とは、互いに足りないものを補う生物なのだ。
彼が去った後に彼を知ったのも