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華岡青洲の妻評論(3)
有吉佐和子による実話に基づくフィクションが原作で、嫁姑の愛憎劇にスポットが 当たっている。
主人公は妻の加恵(若尾文子)だと思うが、映画の主演は青州役の市川雷蔵みたいだ。
増村保造監督、新藤兼人脚色の黄金コンビ。
若尾文子は18歳から40歳代半ばまでを演じている。
憧れの於継(高峰秀子)に心を奪われる若い頃を演じる若尾文子には、チャーミングな清純派の一面が見られる。
そして、雷蔵登場以後は健気さと強さが一体となった成熟した若尾文子が見られる。
高峰秀子は、鬼姑とよき義母の二面性を鬼気迫るまでの演技で魅せる。
雷蔵は、いつものネチッコさが隠せない(これを男の色気と言うのか)。
「乳を揉まれると痛いか?」なんて台詞が似合いすぎ。
語りの杉村春子は、この後舞台で於継役を長く務め、はまり役となった。
しかし、あの乳ガンの腫れなどの特殊メイクはスゴすぎる。
まともに歩けない猫は、演技とは思えない。今なら「動物を虐待していません」というテロップが必要。(してると思うけど)
於継は、どのような思いで最期を迎えたのだろうか。
病床で、加恵に雲平(青州)を頼むと手を握る。が、加恵はえずいて手を振りほどき、部屋を出る。「そんなに私が嫌いか」と切なさを見せる。
一方の加恵は、ガンにおかされた義妹(渡辺美佐子)に「お母様のお陰で私がある」と言うが、於継の娘であるから気を遣ったのか、今となってそれに気づいたのか…。
結局、嫁と姑はスレ違う関係にあるのだろうか。
人間の奥底にあるややこしい心理ばかりを好んで描く監督。美談ではない物語。最後に嫁に行かなかった青洲の妹が核心を突く台詞を言う。これがこの映画の主題だろう。
動物実験シーンがあって、これが中々にエグイ(猫好きは見てはいけない)
ナレーションに杉村春子を使うなど凛としたムードだが、そこはかとなく倒錯したテイストもあり。一筋縄ではいかない映画でありました。