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博奕打ち 総長賭博評論(3)
あるヤクザの一家の跡目問題が、取り返しの付かない大悲劇へとなだれ込んで行く様子が、とにかく凄まじいの一言。
見終わった後は、余りの悲愴感に暫く動けなかったぐらいでした。
ラストでの主人公の鶴田浩二が悪の元凶である金子信雄演じる叔父貴分に、ドスを向けるシーンでのセリフのやりとりがスゴく心に響きました。
金子「叔父貴分のワシにドスを向ける気か。てめェの任侠道はそんなもんだったのか!」
鶴田「任侠道、そんなもの俺にはねえ。俺はただのケチな人殺しだ」
ヤクザ社会の掟や義理と人情が一線を超えてしまった瞬間ですね。
でもそれも仕方ないな、と思えるほどの極悪非道の仕打ちを、主人公はずっと受け続けていたんですもの。
さぞかしはちきれんばかりに膨れあがった堪忍袋の緒が、ついに切れちゃったんでしょうね。
見終わってしばらく動けなくなる程
三島由紀夫がギリシャ悲劇に例えて絶賛したというのは大いに頷けるものです
脚本が兎に角物凄い
なにも憎くもないのに殺し合い、自殺しどんどん死んでいく
自ら相手の向けるドスに刺されに身体をぶつけにいく人間までいる
殺したくないのに殺していく
脚本は笠原和夫
本作の5年後には仁義なき戦いを書く人です
12年後の1980年には二百三高地を書いた人です
その実力が既に本作で爆発しています
鶴田浩二、藤純子、桜町弘子、はじめどの出演者も端役まで皆すばらしい演技を見せます
若山富三郎の頭部の刀傷の特殊メイクは素晴らしいもので感嘆しました
演出も撮影もうなるものです
特に早朝の神社での襲撃シーンは白眉です
痺れました、名作です
なんとも重厚な物語だった。
それこそシェークスピアばりの。
男も哀しいし、女も哀しい。
様々な絆としがらみがあり、それ故に起こる悲劇というか美談というか…今の価値観からは到底導きだせないものがある。
今の若者たちには「バカじゃないの?」と一蹴されそうである。
でもね、なんていうかそれでも美しいと思えるのは、そういう関係性に憧れがあるから。
劇中の誰かと誰かのように、そこまで想える誰かをいつも探しているのかもと思える。
そして、昔の俳優は芝居がうまかった。
…息をするかの如く、厳然と揺るがない存在の仕方に感服する。
ただ、主役の激昂を確かめたかった。
若山さんのカチコミは震えがきそうなほど真に迫ったものであり…その兄弟分と称される人物の狂気を見てみたかったなあ。
なんで、子分が若山さんを止めたのか…それが分からない。
渡世のしきたりとか、想像もつかないから理解しようもないんだが。