フランスの名匠ルネ・クレールが初めて手がけたトーキー作品で、パリの下町で若者たちが織りなす恋の行方を描いたロマンティックコメディ。パリの街角で歌いながら楽譜を売っている青年アルベールと相棒ルイ。ある日、アルベールはルーマニア出身の女性ポーラと出会い、恋心を抱く。しかし、ポーラはゴロツキのフレッドからも言い寄られていて……。主題歌として使用されたタイトルと同名のシャンソンも人気を博した。「ルネ・クレール
レトロスペクティブ」(2021年10月15日~、東京・新宿武蔵野館ほか)で4Kレストア版を上映。
巴里の屋根の下評論(8)
そして、街角で歌う人々。譜面を売って糧にする。こういう生業があったんだ。なかなか粋でオシャレ。主人公はちょっとかわいそうだったが、パリの空が包み込む。
さすがの名作。無声映画からトーキーへの転換期でセリフシーンは限られているけど、無理なくしっかりとドラマは通じている。スタッフは予算の中で知恵を絞ったんだろうな。
1時間36分の上映時間。パリらしい建物の住人たちの様子と一人のルーマニア人の若い女性を巡る三人の男性の話。流石にデジタル再生されている画像なものの、映画は古く、かつトーキーかサイレントかでどちらつかずの画面。トーキー黎明期代表作品と言う。最初はつまらなく感じた。でもシンプルな良さを次第に感じた。不必要なセリフはなく、逆に仕草から理解出来る。台詞は歌も多く「詩的リアリズム」作品として有名らしい。街頭歌手アルベールと最初の親しい出会いの寝室の暗がりの喧嘩、そして女を巡る暗がりでの男の果し合いと電車通過など。今は画像がごちゃごちゃしていて疲れるがそれはない。観客の想像にまかされるはとても心地よい。最近テレビで流行の歌舞伎流のドアップ顔演技の連続とは対照的。