「ラストタンゴ・イン・パリ」「ラストエンペラー」で世界的に知られるベルナルド・ベルトルッチ監督が1970年に手がけた作品で、アルベルト・モラビアの「孤独な青年」を原作に、過去の罪に捕われファシストにならざるを得なかった男の悲哀を描いた。幼い頃、自分を犯そうとした男を射殺してしまったマルチェッロは、いまだに罪の意識が消えずにいた。ある日、彼に反ファシズムのクアドリ教授暗殺の命が下る。好奇の目にさらされながらも優雅に踊る女同士のダンスシーン、雪の降り積もった森での暗殺シーンなどベルトルッチと名匠ビットリオ・ストラーロのコンビが描く映像美も見どころ。日本では72年に劇場公開されており、ベルトルッチ作品の日本における初劇場公開作となった。2015年、デジタルリマスター版でリバイバル公開。
暗殺の森評論(16)
そんなもんさ、あんたもそうだろ?、と観衆を突き放すメッセージを感じた。
プラトンの提示した命題を下敷きに。
人は幻影と共に生き、死んでいくのだ。
ベルトルッチのテーマ「政治と性」が混沌と詰め込まれた内容。(監督はこのテーマで撮り続けた人なのだ)
ファシズムと屈折したセクシャリズム。イタリアのダークサイドを覗いた気分。
役者はみな美しくそこを楽しむ方法もある。しかし内容は重く、そんな気に自分はなれなかった。
やはり森のシーンが白眉。画面からヒリヒリする痛みが伝わってきた。
映像や女優がとても美しく、惜しみなくおっぱいも見れるのだが、とにかく退屈で眠くなる。110分なのに寝てしまい2回中断した。主人公の男のキャラが薄い。単なる暗い美男子でしかなく、何の面白味もない。殺害場面は変でちょっと面白かった。しかしその表現は好きな映画だったら嫌だったかもしれない。
全然好きでもなんでもない作品なのだが、妥協なく懸命に上質なものを仕上げようとしている感じはうかがえた。ずっと気になっていた映画だったので見れて気が済んだ。
人間の醜い部分が、これ程まで美しく描かれていることが本当に衝撃的だった。ワンカットワンカットが絵画の様な美しさで印象深かった。エンドロール前のラストカットには戦慄を覚えた。
美しい絵画の様な世界観に、ユーモアなんかもしっかりと詰め込まれているのに、終始おぞましい空気感。ただ単におぞましさを露骨に出してる訳ではないのに、おぞましさの極みみたいな作品だった。そこら辺のホラー映画よりも恐ろしく、張り詰めた緊張感が印象的だった。
役者達の演技も素晴らしかった。特に女優陣が魅力的だった。
極たまにしか出会えない本物の傑作。ベルナルド・ベルトルッチ監督の凄さを思い知った。映画館で観れたことに感謝。