デンマークの映画作家カール・テオドア・ドライヤーが、劇作家で牧師のカイ・ムンクによる戯曲「御言葉」を原作に家族の葛藤と信仰の真髄を問い、1955年・第16回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた傑作ドラマ。ユトランド半島で農場を営むボーオン一家。真面目だが信仰心の薄い長男は、妻インガーをお産で亡くしてしまう。家族が悲嘆に暮れる中、精神的に不安定で自らをキリストと信じる次男ヨハンネスが失踪。しかし突然正気を取り戻し、インガーの葬儀に現れる。「奇跡の映画
カール・テオドア・ドライヤー
セレクション」(2021年12月下旬~、シアター・イメージフォーラムほか)にてデジタルリマスター版で上映。
奇跡(1954)評論(2)
三男の恋人アンネの家へ乗り込むボーエン家の父親。しかし、あっけなく宗派が違うと断られる。家に戻ると長男の嫁インガが3人目の子を出産するが、難産だったため母体の危機。祈りと医学の力で助かるかと思いきや、また様態が急変して亡くなってしまう。
告別式の際、アンネの父親も参列し、娘を嫁に出すことを承諾。この宗派を超えた結婚だけでも奇跡的なんだろうけど、その後に次男が正気を取り戻して「信仰が足りない」と皆を責めるのだ・・・奇跡は起こった。
キリスト教信者でなければこの映画の良さはわからないのかもしれないけど、キリスト復活を思わせるエンディングには神聖な気分に浸れるのです。宗派を超えた敬虔な祈り。それにもまして、人間の温かさまでもが伝わってくる。